2022年11月10日木曜日

私の履歴書8【ホーチミン旅行客殺到?ベトナム雑貨店emem】


2001年10月頃。
ベトナム雑貨店ememをオープンした。
BUTTERFLY26と同様、観光客向けの土産物屋だ。
店の場所は1区のMac Thi Buoi通りで、ドンコイ通りとハイバチュン通りの間だ。
Mac Thi Buoi 通りは、ドンコイ通りと直角に交差する短い道だ。

ホテル内店舗の失敗で懲りた私は、自由に内外装して、雑貨店としての雰囲気を演出できる一軒家を借りた。
広さは十分で、4.5m×28mの2階建てだ。
1階には食器類や小物等の雑貨類全般を陳列し、2階をサンダル、バッグや洋服等のファッション系のスペースにした。
2階のバックルームにテイラースタッフと刺繍スタッフを数名常駐させ、オーダーメイドで衣類の販売も始めた。

店は地図で見るとホーチミンの中心なのだが、観光客はあまり歩いておらず、土産物屋をやるにはイマイチな立地だった。
オープン当時、付近に土産物屋はなく、空き物件がちらほらあったと思う。
家賃は1,200ドルだった。
私が借りる前のテナントはワイン屋で、1,000ドルで借りていたようだ。

大家は典型的なハノイ出身の婆さん。
旦那は共産党員で国営船会社の社長だ。(今は天国にいる)
物件は、戦後、功労のあった共産党員達に割譲されたものらしい。
ホーチミンの不動産物件でよくあるパターンだ。
この大家の婆さんには結構悩まされた。

当初私は、イマイチな立地だが1,200ドルは高くないし、中心ではあるので、知られさえすれば観光客は来るはずだ、とポジティブだった。
私は旅行会社と提携し、広告や営業活動を積極的に行った。

どうなったか?
ememは初めの月から儲かった。
投資回収は半年かからなかったと思う。
後に多くのガイドブックでememが紹介され、有名店となり、売上は安定するようになった。
2000年代にホーチミンに観光できたことのある人は、この店を覚えているかもだ。
ememという店舗名の由来は、ちょっとゲスいのでここでは控える。

この場所でのemem店舗営業は十年続けた。(後にドンコイ通りに移転)

初め1,200ドルだった家賃は契約更新の度に上げられ、最終的には5,500ドルになった。
私は家賃交渉を毎回頑張ったが、ビジネスがうまくいってることは大家に把握されており、毎契約時とんでもない値上げ率をのまされた。
2002年頃からベトナムは不動産バブルに突入し始めていたこともあり、婆さんは常に強気だった。

婆さんの家は2区の高級住宅街にあるヴィラだ。
全く汗水たらさず、利権で獲得した、プール付きの立派な豪邸だ。
私は家賃交渉の度にそこへ行き、へりくだって愛想笑いしていた。
こっちは毎月お金を払っていても、客ではないのだ。

店が儲かっていると、店子はその物件が必要だ。
簡単に移転などできない。
内装は無駄になるし、その住所での広告も無駄になる。
何より移転するとまた一からの準備なのでカネも時間もかかる。
大家の家賃アップに対し、家賃の上昇金額×契約年数と移転費用や手間を比べることになり、大体は値上げをのんだほうがマシということになって、家賃が上がってしまうのだ。
家賃交渉というより、上げ幅縮小のお願い、といったところだ。

また、日本のように入居者に有利な法律はない。

店を開けてから数年後、中心街で土産物屋に適した物件を見つけるのはかなり難しくなっていた。
家賃が高くなったから安いところに移転したいと思っても、そんな空き物件は皆無なのだ。
当時は、ちょっとしたアジアン雑貨ブーム、ベトナム観光ブームになっていて、我も我もと多くのベトナム人が同様の土産物屋を開けたからだ。
私以外の日本人オーナーの土産物屋も数軒できた。

土産物屋業界は、小さなパイを、早い者勝ちで、奪い合う戦いだ。
ほとんどの観光客はホーチミンに数泊する程度で、行動範囲は限られ、土産物に使うお金は平均50ドル以下だ。

観光客は、たまたま入ったお店で土産物を買ってしまったら、もうおなか一杯で、次はない。
翌日安くてカワイイ雑貨を見つけても、お金もキャリースペースもないのだ。
また、一度土産物を買ったら、もう土産物屋に行かない人がほとんど。
さらに、ここは海外であり、いくら気に入ってもらってもリピート率は低い。

"先に自分の店に来てもらい買ってもらう"ということがメチャクチャ重要な商売なのだ。

ホーチミンの中心で土産物屋を開けれる物件には限りがある。
カニバリゼーションに多少なったとしても、自社で先にいい立地を確保し、競合他社に店を作らせない戦略がいいだろう。
小さいパイを全部食べてやる!
と、その頃の私は思っていた。


【ベトナムから雑貨類の仕入れをご検討の方へ】

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